SAPIENS 【TOP NOTE】:はじめに〜僕は37年前に初めて「甲本ヒロト」を観た。
SAPIENS TOP NOTE
「普遍」をもつということ
1988年4月1日。
大牟田市文化会館で開催された「ザ・ブルーハーツ」のライブを観に行った僕は、初めて「甲本ヒロト」を目の当たりにした。そのパフォーマンスとメッセージは衝撃的すぎて、田舎で素朴に暮らしてきた18歳の僕には、受け止めきれないほどのインパクトだった。それ以降、バンドが「ザ・ハイロウズ」から「ザ・クロマニヨンズ」へと変わっても、「甲本ヒロト」は僕にとって「ロック」と「青春」の象徴であり続けている。
今回の『SAPIENS』のテーマは「普遍の存在」だ。
だったら表紙はこの人しかいない——そう思っていた甲本ヒロトさんの出演が決まったとき、僕は全身が震えた。40年近く胸に秘めてきた想いが結実するような気がした。なぜなら、彼は僕にとって「普遍の存在」そのものだからだ。ここまで人生を歩んでくる中で、自分が幾度となく時代に流され、情報に踊らされてきたときも、彼は少しもブレなかった。口にする言葉も、スタンスも、発信する熱量すらも全く変わらない存在として僕の心に君臨してきた。
それを感じるたびに、自分もそうありたいと思ってきた。
しかし今の時代、頑張れば頑張るほど「進化」や「イノベーション」を起こさなければならないというプレッシャーに追いかけられる。それらと健全に向き合えればいいが、時に結果に執着するあまり、本来の自分らしくないことを無理して演じることを「進化」だと吐き違え、いつのまにかよくわからない方向へ進もうとしてしまう。そんなとき、自分が大切にすべき原点をもつことの大切さを、何度も考えてきた。
今、スマートフォンを開けば、各分野の最新ニュースから、膨大な専門知識まですぐにアクセスできる。自分がわからないことや知らないことに、即座に答えてくれる。その上AIが過不足ない資料を数秒でつくり、話すべき内容まで教えてくれて、SNS向けのバズる画像や動画まで生成してくれる。便利だしタイパも最高だし、活用しない方がおかしい。情報収集に血眼になって育った昭和生まれの自分にしてみると「完璧な世界」と言っていいだろう。しかし最近、自分がどうもおかしい。
「わからないことがない」はずなのに、ますます「わからなくなった」気がする。
「何もかも完璧」なのに、心が動かない。自分の感覚がどんどん薄れていっている気がする。
そういう感じに時々陥るようになり、僕は真剣に考えるようになった。
AIがすべてを“正解”で埋め尽くす時代だからこそ、何かを判断する時は「自分の中にある確かさ」を明確に自覚することが大切だと思う。それは言い換えれば、自分にとっての「普遍」をもつということ。
これは非常に情緒的なことで、他人や、ましてやAIが決めることではない。
ブランドやビジネスにおきかえれば、上記の「自分」という言葉を「企業」に置き換えても、まったく同じだと思う。
今回の編集テーマを「普遍の存在」としたのも、そんな想いからである。
甲本ヒロトさんはじめ、「普遍」の価値を体現する人たちに魂で向き合った、今回の『SAPIENS』。
混沌の今を生き抜く、あなたに贈ります。
