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PROFILE
福岡市美術館 館長 岩永 悦子
福岡市美術館 館長 岩永 悦子 同志社大学文学部文化学科美学藝術学専攻卒業、同大学院文学研究科哲学科博士課程前期修了(修士号取得)。1987年、福岡市美術館学芸員・近現代美術係に着任。2015年より学芸課長となり、2019年のリニューアルでは中心的な役割を果たす。2020年より運営部長と学芸課長を兼任。2021年4月、福岡市美術館 館長、福岡アジア美術館 館長に。

約40年かけて収集した、すごすぎる所蔵品 “僕の” “私の” ダリ、ミロ、ウォーホル

福岡市美術館のすごすぎる所蔵品

2019年3月のリニューアルオープンがまだ記憶に新しい福岡市美術館。開館したのは1979(昭和54)年。高度経済成長期後、バブル経済前にあたる時期、全国各地で美術館が増え始めていくなかで福岡市美術館も誕生した。

そんな時代背景もあり、自治体が運営する美術館は今でこそ全国各地にあるが、福岡市美術館の場合、コロナ禍前は美術館を旅のプランの一つに来福する外国人観光客も多かったという。一番の目的はスポットで催される企画展ではなく、福岡市美術館の所蔵品だ。福岡市民にとっては、あまりにも身近で当たり前にある公共施設のため、まさに灯台下暗し状態だが、実は福岡市美術館が所蔵する約16,000点のなかには、世界的にみても、ものすごい価値がある作品が多数存在する。


©The Estate of Jean-Michel Basquiat/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 E4425
©Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2021 E4425

サルバドール・ダリの《ポルト・リガトの聖母》(1950年)、ジョアン・ミロの《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》(1945年)、マルク・シャガールの《空飛ぶアトラージュ》(1945年)、ジャン・ミシェル・バスキアの《無題》(1984年)、アンディ・ウォーホルの《エルヴィス》(1963年)。作品名は分からずとも、画家の名前を聞けば、そのすごさを実感できるだろう。

館長の岩永悦子さんは「開館前に購入したミロの作品は購入費用が当時の新聞に掲載され、市民の方々から『子どもが描いたような絵画がウン億円もするのか』といったご意見もいただいたそうです。でも今では所蔵したいと思っても、手に入れることはできない、とても価値のある作品。ウォーホルの《エルヴィス》も、見れば、『これか!』とわかるほど有名なポップアート。そんな作品が福岡市美術館にはたくさんあるんです」。

フランスのルーブル美術館にモナリザを見に行く感覚に近いかも

世界的な名画を多数所蔵している美術館は日本全国を探してもなかなかない。だいぶ誇張した表現だが、福岡市美術館を訪れる外国人観光客にとっては、フランスのルーブル美術館にモナリザを見に行く感覚に近いかもしれない。そんな美術館が地下鉄で、バスで、自転車で、近隣に暮らしていれば徒歩で行ける場所にある街、福岡市。しかもコレクション展の観覧料金は一般200円、高大生100円、中学生以下なら無料だ。

「福岡市美術館は福岡市に暮らす方々の税金で成り立っています。だから、当館の所蔵品は皆様の日々の暮らしの延長線上にあるもので、“僕の”“私の”コレクションと思っていただきたいんです。極端な話、友人・知人が福岡市に遊びに来られたなら、『私のウォーホル、かっこいいでしょ?』『俺のこのバスキア、やばくね?』といった感覚でご案内いただきたいぐらい。展示・保管されている場所は福岡市美術館ですが、当館に所蔵している作品はすべて福岡市民の財産ですから」と岩永さん。

コレクション展の展示方法にも工夫が

コレクション展示室に入ると、最初にダリやミロ、シャガールなど世界的な画家の作品が展示されている。岩永さんは、その理由をこう説明する。「コレクション展を観覧に来られる方の目的の大半は、やはり著名な画家の作品。もし、そういった作品を順路の終盤に展示すると、早く見たいという期待感から、やや駆け足気味にほかの作品を鑑賞してしまいがち。これは心理的にしょうがないことです。であれば、最初から著名な画家の作品を展示した方が良いと判断しました。まずはじっくり目当ての絵画を鑑賞し、その後、順路に沿ってほかの作品にも出会ってほしいんです。

現在は約300点の作品を展示していますので、画家の名前は知らずとも、“気の合う”作品はきっと、そのなかにあるはず。興味をそそられたら、ぜひ画家の名前を覚えて、ほかの作品にも触れていただけたら」。言わば、コレクション展は知らない世界と出合うきっかけにもなるというわけだ。
さらに、順路に沿って見ることで、よりおもしろい作品との出会い方ができるという。そのことを意識しながら作品を見てまわるのも良さそうだ。

鑑賞環境にとことんこだわった展示空間

リニューアルにより、近現代美術室は3区画に分かれ、それぞれ壁の色や空間の広がりが異なるのもポイントだ。照明も作品本来の色合いを表現できるLEDを採用するなど、鑑賞環境にとことんこだわっている。岩永さんは「同じ絵画でも見る場所によって見え方や印象の残り方は変わります。そういった意味では、絵画を鑑賞する環境にこだわってリニューアルできた点もひそかな自慢」と話す。

所蔵品を目当てに海外客も訪れる福岡市美術館。ルーブル美術館やシカゴ美術館などと比較するのは、話の次元が違うかもしれないが、そういった世界的な美術館に負けないぐらいの名画を所蔵しているのは事実。改めて福岡市美術館の価値を見直す意味でも、コレクション展狙いで来館してみてほしい。


©2021 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc./ARS, NY & JASPAR, Tokyo E4425

ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント

2021年12月23日(木)〜2022年2月13日(日)

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890)の世界最大の個人収集家、ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869〜1939)。彼女はゴッホがまだ評価の途上にあった20世紀初頭、20年近くをかけて約90点の油彩と180点を超える素描・版画を収集。ヘレーネが初代館長を務めたクレラー=ミュラー美術館のコレクションに加え、ファン・ゴッホ美術館が所蔵する選りすぐりのゴッホ作品52点ほか全72点を紹介。

福岡市美術館
福岡市中央区大濠公園1-6
[ TEL ]
092-714-6051(代表)
[ 開館時間 ]
9:30〜17:30 / 7〜10月の金・土曜日は20:00まで開館(入館は閉館の30分前まで)
[ 休館日 ]
月曜日 / 12月28日~1月4日※月曜日が祝日・振替休日の場合は、その後の最初の平日

>>公式サイトはこちら

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