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SAPIENS TALK Vol.9 佐藤 慎介 (NO COFFEE)(5/5) 「ブランド作りで大切なこと」

「NO COFFEE」はなぜ求められるのか

 

小柳:最初に戻りまして「コーヒーショップ&ブランドコラボ」っていうのは最初から考えられていたんですか。

佐藤:そこまで考えてなかったかもしれないですね。自分で企画してグッズを作っていきたいなっていうのは思っていたんですけど。一番最初のコラボが「plantica(プランティカ)」っていうフラワーアーティストチームとやったんですけど。うちって基本、黒、白、グレーがメインで、シンプルなデザインをコンセプトにやっているので、なかなか花柄だったりを、唐突にやるのは自分の中では違うなと思っていて。 だったらコラボでやれば、普段やらないようなことができるし、見せ方も変えられるから面白いなと思って。それをやって以降「あぁこういうやり方もありかもな」と思ったのが始まりかもしれないです。

小柳:コラボアイテムの文脈に乗っかれば、セオリーからちょっと外れても、その世界で成立するっていうことですね。

佐藤:はい。だからそのうち「NO〜」っていうワードがこんなにも便利だったんだって気付いていくっていう。 もう何かとコラボの話が出ると「NO〜やりましょう」って言われるので。別にうちのものじゃないわけですよ。だけど、うちのもののようになってきてありがたいです。

小柳:他のところで「NO〜」とか使えないですもんね。別に登録商標とか取れないじゃないですか、けど佐藤さんのものになっていますよね。

佐藤:そう。やっぱり街中とかで見ると色々あるじゃないですか。「NO〜 NO LIFE」とか。やっぱり反応しますもんね。お土産屋とかでも「パクリじゃねえのかな」って(笑)。そんなこと言わないですけど。

小柳:「相談がないぞ」って思っちゃいますよね。ブランディングカンパニーをやっている僕から見ると、「NO COFFEE」さんってものすごく不思議な存在で。「FIDES(フィデス)」さんのようなブランドと組んだりするのはすごく分かるんですけど、さっきもあった「GLOBAL WORK」さんなど大きなところと組むっていうのは、どうしても僕らからするとブランドのセオリーから「これでなんでいけるんだろう」って思っちゃうわけですよ。

カルチャーブランドはカルチャーブランド、マスブランドはマスブランド、そこを超えちゃうと迎合しちゃったなとか、また難しい方いったなとなってしまうし。ブランドを管理してる方からすると、コントロールが出来なくなっちゃうんじゃないかとか。それを佐藤さんは簡単じゃないですけど飄々とやっているというところから、「NO COFFEE」のブランドパーソナリティをどんな風に意識されてるのか。表現が正しいか分からないですけど「揺らぎ」のようなものがどうして許容されてるんだろうっていうのを、聞いてみたいんですが。

佐藤:そうですね。なかなか言葉にするのは難しいんですけど、うちって今までなかった立ち位置で。コーヒー屋なんですけど、普通のコーヒー屋じゃなくて、最初からもの作りをやっていたりとか「ブランド化しよう」っていう新しいジャンルで始めたところもあるので。だから、例えばアパレルのブランドさんがいろんなところとコラボするのとは、ちょっと違うかなって思っていて。多分うちはやりやすいんですよ。アパレルって色々縛りがあって、そんなに頻繁にはコラボ出来なかったりするし。契約の問題で出来ないこともあったりするんですけど、そういうところをコーヒーっていうジャンルだからこそすり抜けられるっていう強みとか、 わりと色々やりやすいですね。色々やっても、多分そんなに違和感がないのかなって。まぁ違和感を感じる人はいると思うんですけど。

小柳:「GLOBAL WORK」さんとされた時に賛否両論だったというお話がありましたけど、結果 ブランド価値が落ちることにはなっていないですもんね。

佐藤:僕も分からないんですけど、Instagramのフォロワーと一緒で日々減っていくもので。でも日々増えていて、増えてる人の方が多いから数字が増えていくわけで。うちの「NO COFFEE」というものに対するフォロワーの人の数が、減る人よりも増えていけば、結局増えていく。僕はそっちの方が大事だなと思っています。もちろんずっと好きでいてほしいけど、でもそんなことは無理じゃないですか。自分で考えても、ずっと好きでいられるってなかなか難しくて。 実際、最初の頃来てくれていたお客さんがだいぶ来てないなっていうこともあったりして。

webをずっとやっていますけど、 最初の頃に常連レベルで買ってくれていた人が買わなくなったりとかもあります。ただ、新しい常連さんは確実に出来ているわけですよ。もちろん繋ぎ止めたい部分もあるけど、繋ぎ止めるところに力を注ぐよりも、 新しいお客さんに力を注いでいく方が、僕は建設的なのかなって思っていて。そっちの方が可能性がありますし。みんなに残ってほしいんですよ、みんなに好きでいてほしいのはあるんですけど、そんなのは不可能なので、こういう考え方をしているのかもしれないです。

小柳:ブランディングの固い頭で言うと、マスブランド、ニッチブランド、カルチャーブランド、マイナーブランドとかいろんなカテゴリーがあるんですけど。「NO COFFEE」ってそのカテゴリーで言ったら、どこかにあてはめられますか。

佐藤:全部交わっているかもしれないですね。

小柳:なるほど。交わっているところにあるっていうことですね。
名前の「NO〜」っていうのも、日本茶ではなかなか難しいと思っていて、紅茶もマイナーだし。コーヒーという絶妙であり、奇跡のマッチングを起こしてこうなってますよね。

佐藤;そうですね。うちとか別にコーヒー飲めない人でも買ってくれるわけですよ。それってやっぱり素晴らしくて。もちろん買う人もいるんでしょうけど、普通のコーヒー屋のグッズをコーヒー飲めない人が買うとも思えないし。うちは別にグッズだけ買いに来てくれても全然よくて、そんな人もいっぱいいるのでむしろウェルカムなんです。だから、そういう人が増えてくれる方が嬉しくて。
もちろんコーヒーも飲んでくれると嬉しいけど、結局嗜好品なので。僕も適当にやっているつもりはないし、自分が美味しいと思って出しているんですけど、でも人によって好みが違うんですよね。だから、それで「ここはまずい」だのなんだの言う人がいらっしゃるのは、よくないんじゃないかなって思いますね。

小柳:もっと突っ込んだ質問をしてもいいですか?「NO COFFEE」というブランドの何をみんなが好きだと思いますか。何を欲しがっているから、みんなが買ってくれたり残っているのかお聞きしたいんですが。

佐藤:僕はそもそもみんなが好きだとは思っていないので難しいんですけど、好きだと思っている人が何を欲しがっているのかっていうところで言うと、(僕は釣りはしないですが)釣りで例えるなら釣り竿をいっぱい出している方が、 引っかかる可能性はあるわけで。だから、いろんなジャンルをやってるほど、いろんなものに興味がある人にお客さんのファンが広がっていくのかなと。ゴルフ好きな人は、ゴルフに引っかかったり、色々あるじゃないですか。その数が多ければ多いほど、お客さんのパイが広がっていくし。だからいろんな人に向けてやっていきたいなって思ってるから、何を欲しがってるのかっていうよりは、興味があるものを作るようにしている感じですかね。

小柳:そこはもう目利きだったり、バランスで判断されているんでしょうか。やっぱり「コーヒー屋さんがやってる」っていう、コーヒーという媒体の奇跡ですかね。それはもう感覚でしかないんでしょうか。いろんな話が来る中で「これ、いいんじゃないかな」というのと、断るものの境目の一番大きなものってなんですか。

佐藤:断る基準ですか?タイミングもあるんですけど、それこそ自分のところにメリットを感じなかったらやらないですかね。あと自分が興味がないものはやらないですよね。 そこにストーリーがないので。

小柳:そういうところですね。ありがとうございます。少しテーマが大きくなりますけど、佐藤さんはこれからの時代をどう見ていますか。どんなものが求められていくとか、時代の変化をどう感じていらっしゃいますか。

佐藤:難しいですね。日本だけで考えていると、やっぱりきついよなって思います。 というのは前の会社の社長の影響ですごく海外志向になって。国内だけでもそうですけど「パイを広げる」って考えたら、やっぱり海外に目を向けていく方が、もっとパイが広がるわけじゃないですか。「NO COFFEE」っていうものを知らない人の方が圧倒的に多いし、商売の可能性って無限にあるなと思います。国内でもうちのことを知らない人が1億人ぐらいいるって可能性しかないですよね。どうやったらいろんな人に知ってもらえるかっていうのを考えると、ブランド力の向上とやるからにはきちんと売り上げに繋げていきたいっていうのがまず大前提にありますね。

小柳:30年前とかInstagramなどのSNSがなかったら「1店舗でパイを広げる」という風には考えられなかったかもしれないですよね。今だからその可能性があるっていう、SNS時代の可能性を見ているという感じですかね。

 

 

ブランド作りで大切なこと

 

小柳:ここからは皆さんが1番聞きたいことかもしれないですけど、ブランドを作るには何が一番大切と思いますか。セオリーがあるか、など後で気付いたことでもいいんですけど、皆さんにアドバイスを頂けると。

佐藤:なんだろう。若い子に限らずですけど「僕もいずれ グッズを作ったりするコーヒー屋をやりたいんですけど、どうやったらいいですかね」みたいに言われるんですよ。でも答えがあるんだったら、みんなやってるっていう話なんですよね。だから僕は「いろんな経験をしたらいいんじゃないですか」と言います。自分がいきなり別にやらなくてもいいし、僕はやっぱり今まで培ってきた経験と、人との繋がりだったり、いろんな人の話を聞いて勉強して、今の自分がいいところを自分なりにチョイスしてやってきたと思っているので。

でもそれって多分、僕と同じ環境で過ごした同い年の人がいたとしても、多分感じ方は違うじゃないですか。 その人がどう捉えるか次第なので。だからその人のポテンシャル次第にもなるのかなと思うし、僕が違う職場で働いていたら、今の自分はいないだろうし。

小柳:じゃあおもちゃ屋さんとアパレルで働いた13年間は、今考えるとめっちゃ良かったっていうことですかね。

佐藤:きつかったです。きつかったんですけど。でもそれを自分のものにしようと思って頑張った結果だと思っています。

小柳:「自分のものにしてやろう」と思って働いていたんですね。

佐藤:まぁ最初の会社は大学中退して入っているので辞めるわけにはいかないと思って。だから(辞めるにしても)「自分のものにしてからにしないと」と思ってがむしゃらに働きましたね。本当にきつかったですけど(笑)。でもそれはすごく感謝しています。いろんな理不尽なこともありましたけど、ちょっとやそっとのことだとなんとも思わないし、ひどいことを言われたとしてもなんとも思わなくて。そういう精神力っていうのは、何かをやるにしても結構大事ですよね。

小柳:やっぱりきつい時期や密度が高い時期がないと、なかなかそういう経験とか知識って積み上がらないですかね。

佐藤:いろんな経験をして作り上げる方が面白いと思うんですよね。その人の個性が見えないとブランドってあまり面白くなくて。パッと真似したようなブランドが出てきても、その人の個性が見えないと説得力がないし、そういうブランドってそんなに長く続かない印象もあるので。そんな偉そうに言える立場でもないですけど、結構それは大事なのかなって思いますね。

小柳:「佐藤さんって怖い人なんですかって聞かれます」って言っていたんですけど、僕も佐藤さんとそんなに何回も会っているわけじゃないじゃないですか。 だけどお会いして話した時に「NO COFFEE」のブランドとすごく重なりました。あのオープンさ、いろんなものとコラボするっていうその広さが、 すごく穏やかで、話を聞いて、ちゃんと優しく答えるっていう雰囲気の佐藤さんのパーソナリティやキャラクターが「NO COFFEE」に出てるなってすごく思いました。

佐藤:ありがとうございます!

 

 

<SAPIENS TALK 編集後記>


このアーカイブを掲載する作業をしている時、佐藤さんのインスタグラムには「NO COFFEE  FUO CHINA(中国・佛山)」がオープンしたという写真がポストされていました。このSAPIENS TALKの中でも、海外をずっと見据えてきたと言われていた佐藤さんの、新しいチャレンジが始まっていました。

地元、福岡から世界へ進んでいくカルチャーブランド。個人的にも注目ですし、応援したい!
そう思わせる、佐藤さんの穏やかな雰囲気最高でした。

みなさん、最後までありがとうございました。

 

(了)

 

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