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SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(3/4)

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◆中村貞裕のルーツ

小柳:ここからは中村さんのルーツに迫っていきたいと思います。「ミーハー仕事術」という本を出されているほど、ご自身でもミーハーな性格だと仰っていますが中村さんの言う「ミーハー」ってどういうことですか。

中村:僕って昔からすごくミーハーなんですよ。子供の頃から好奇心旺盛で新しいものが好きでした。ただ話題になったことをやってもどれも続かなくて。例えばスケボーをやってもちょっと出来るようになったら辞めちゃうし、サーフィンもそう。高校時代はお金を貯めてDJブースなんかも買ったんですけど、それもちょっと出来るようになったらすぐ辞めちゃって。部活も3ヶ月で辞めちゃうし、とにかく何も続けられたことがなくて。好奇心旺盛だけど熱しやすく冷めやすいっていうのが僕らしいところでもあったんですよね。それに対するコンプレックスは無かったんですけど、20歳ぐらいになると僕が辞めちゃったものを続けている人たちがたくさんいるんですよ。

小柳:周りはみんな何かを続けていたんですね。

中村:僕はバスケ部だったんですけど、高校、大学とバスケを続けている人たちは体育会に入ってすごく青春しているような気がして。あとサーフィンやスケボーをやっていた人たちもそこそこ上手くなっていて。ギターもやっていたことがあるんですけど、バンドを続けていた人たちは文化祭でライブをやったりしていて。そうやってみんなが続けてることを「いいなぁ」と思いながらも、「俺が1年やっていたら同じぐらいになるんじゃないかな」みたいな変な余裕があったんです。結局続いていないから出来ないんですけど(笑)。根拠のない自信がありながらも、だんだん何も続かない自分にコンプレックスを持ちながら、でも性格は変えられないから色んなものに手をつけながら広く浅くやっていったのが始まりですね。

小柳:「広く浅く」はそこから始まったんですね。

中村:伊勢丹に入社した時にそういう性格が体からにじみ出ていたのか、広く浅く知っていることが「トレンドを知っている人」みたいな感じになったんですよ。気付くと同期から「今度デートに行くんだけど、どんなお店がいいかな」と聞かれたり、同期が100人ぐらいいる中で藤巻さんがいつも僕に「お前らの中では何が一番流行っているの」とか、みんなが僕に聞くようになってきて。伊勢丹だと、デザイナーとか様々なジャンルのスペシャリストに会っていたんですけど、彼らもみんな僕に「何が流行っているの」と聞いてきて。その時に『100っていう到達点があったらスペシャリスト(一つのことを極める人)は「100×1」で、僕は小さいかもしれないけど1の知識を100個持っているから「1×100」なんだ』って。

小柳:なるほど。そこで気付かれたんですね。

中村:広く浅くジェネラリストである自分をコンプレックスに感じたり、「ミーハーで嫌だな」っていう気持ちもあったんですけど、「100×1」の人は「1×100」が出来ない、どちらも同じ100に目指す到達点だと考えると、僕は「1×100」が得意だし「1×200」も出来るなって。同じような仲間と夜な夜な会ってミーハーな話ばっかりしていたら、どんどん広く浅く詳しくなっていったんですよね。「1×100」の自分を認めたことによって、1万を作るためにはどうしたらいいか考えられるようになったし、僕がゼネラリストとして立ってプロデューサーになり、プロフェッショナルな人たちと組んで影響力のあることをすればいいんだって思うようになりました。これに気付いたことによって、僕は「ミーハーを武器に仕事をしていこう」と思えたので、この数式は大切にしていますね。

小柳:振り切ったのが良かったんですね。

中村:それが僕が「スーパーミーハー」でいようと思ったきっかけで、今もずっとそのスタイルで仕事をしています。広く浅く何でも知ってマーケティングするのが僕の「売り」みたいになっているので。とにかく何でも知っている人になりたいと思ってやっていたら、「広く浅く、めちゃくちゃ詳しい人」になっちゃいました。

小柳:無敵ですね!(笑)

 

◆マーケティングにおいて大切にしているキーワード

 小柳:それだけミーハーを極めた中村さんがどうやって仕事をされてきたか振り返りながら、ここからはマーケティングにおいて大切にしているキーワードごとにお聞きしていきます。1つ目は「最大公約数の情報から本当のトレンドを絞り込む」というキーワードですが、これはどういうことですか。

中村:うちの会社では雑誌やSNSという情報の取り方もあるんですけど、実際に海外に行ったり、こうして福岡に来た時も話題のお店を雑誌やネットで仕入れて片っ端から見に行ったり、ハシゴしたりして。ありとあらゆるメディアと自分の行動でインプットしています。それだけで終わると「情報オタク」になっちゃうんですけど、マーケティングにおいては「目利き」にならなきゃいけなくて、その違いは「いい情報を仕入れて、それを出せるかどうか」だと思っているんですよね。僕らはインプット力よりアウトプット力を高めることが大切だと考えていて「インプットすることでオタクになり、アウトプットすることによって目利きになる」という発想があるんですよ。

小柳:インプットだけしていると「情報オタク」になっちゃうんですね。

中村:今はSNSがあるので僕もどんどん発信していますけど、人に会ったら口コミで「こんなのありましたよ」「東京ではここに行ってください」とどんどんいい情報を出すようにしています。雑誌やメディアっていい情報を出せば出すほど「もっといい情報を集めなきゃいけない」ってどんどんレベルが上がっていくと思うんです。自分もメディアだと考えると、いい情報を出せば出すほど、いい情報を集めなきゃいけなくなるので、そうすることで目利きになっていくと思っています。

小柳:みなさん!大切なのは、アウトプットです。

中村:うちのプロデュースチームにもグループLINEがあって、どこかに行った時に写真をどんどん送り合ったりしていて。出せば出すほど自分もいい情報を集めなきゃいけないし、いろんな人がいい情報をくれるようになるんですよ。インプットってすごく楽しいんですけど、アウトプットってジムに通うような感じで結構続けるのが大変なんですよね。「続けよう」って意志がないと止まっちゃうので。SNSも面倒なんですけど、情報を出していくとみんなが教えてくれたり、自分も「いいメディアを作っていかなきゃいけないな」と思うので「いい情報を集めなきゃ。変な情報は集められないな」となるんですよ。僕も10個情報があったら8個ぐらいセレクトしている感じで、出していない情報もたくさんあります。マーケティングにおいてはこうした「アウトプット力を高める」っていうのが僕らの会社の一番のキーワードですね。それによってインプット力のレベルが上がってくるので自ずと目利きになるんじゃないかなって。

小柳:確かにそうかもしれないですね。飲食業界の人だったら、飲食の情報をいつもアウトプットしている人に話を聞きに行きたいですもんね。次ですが「ブームとスタイル」というキーワードはどういったことでしょうか。

中村:これは本を作った10年前に無意識でやっていただけで、今これが頭の中にあるかというとそうでもないんですけど。僕らはブームを作ったり、話題を作りたい、影響力を与えたいというのが会社の出発であり常に思っていることなんですよね。そしてこの「ブームを作る」ということが僕らの定義を作ったんです。

小柳:どんな定義ですか?

中村:「ブームを作るのは一番最初じゃなくていい」という定義です。僕が最初に「Sign」を作った時に「カフェブームを作った人」としてやたら取材を受けたんですよ。僕自身は駒沢公園の山本宇一さんが作った「バワリーキッチン」を見て「これは流行るぞ」と思って「Sign」「OFFICE」を作ったんですけど、それでも「ブームを作った人」って言われるんです。そして周りを見るとブームに乗っかった層、マラソンでいうと10人ぐらいいる1位グループまでは「ブームを作った」と言われることに気付いたんです。そこで「一番初めじゃなくてもいい」という定義をしたんですね。

小柳:なるほど。

中村:あとは「その場所で初めて作って、1位グループに入っている人たちはみんなブームと言われる」っていう定義があります。例えば僕らがやっている「bills」は「パンケーキを流行らせたスタート」と言われていますけど、ニューヨークでもハワイでも皆食べるし、僕らが作ったというよりは海外から持ってきただけなんです。でも0から1じゃなくて、1を10にすればブームになるんだなと気付いたんですよね。建築家やアーティストなど0から1というオリジナリティーを追求している方たちってすごくストイックで、会社もシーンとしてプレッシャーもすごいんです。だからブームやトレンドを作ってライフスタイルを提案することが0から1であるっていう発想を一回取り除こうと思って。社内や僕自身のプレッシャーを取りたかったんですよね、そうすると楽しく取り組めるということもあってブームの定義を作ったんです。

小柳:マラソンでいう1位グループに入るということを意識されているんですね。

中村:タイミングを逃しちゃうと2位グループになっちゃうので、常に1位グループに入るということは意識しているし、入らなさそうなものは手を出さないようにしています。「いいなぁ」と思ってうだうだしているうちに、2位グループになっちゃう瞬間があるんですよね。まずブームを作る、あとはブームからスタイルになる瞬間というのがあるんですけど、それは肌で感じています。スタイルになる=仕事になる時なので「ブームに乗り損ねちゃったけど、何かスタイルになりそうなもの」というのも探しています。

小柳:なるほど。「スタイルになるもの」ですか。

中村:スタイルにならずブームで終わっちゃうものもあるんですけど、10年ぐらい経ってもう一回流行るものもたくさんあるんですよ。だからブームで定着しなかったものも探すようにしています。例えばモツ鍋って僕が学生の頃たくさんお店が出来ましたけどブームを作った1店舗、1位グループだけが残って、その後に出来たものは全部なくなっちゃったんです。

小柳:確かに一時期すごく流行りましたけど一気になくなっちゃいましたね。

中村:ただ10年後ぐらいにまた違うスタイル、今度は博多な感じで「豚骨もつ鍋」を出すお店がたくさん出来たりして。ジンギスカンも一時期ものすごい数の店が出来た後に2〜3店以外全部なくなっちゃったのが、昨年ぐらいからまた流行りだしていたり。今サウナもすごいんですけど、多分この勢いのやつはなくなるんですよ。いいものは残るんですけど、スタイルに乗っかってきたものはなくなっちゃうんじゃないかなと思います。

小柳:なるほどですね。1位グループと2位グループになる瞬間や、スタイルに乗っかるものがダメになっていくという点は分析していくと面白そうですね。

中村:僕らはブームとトレンドにしてライフスタイルに落とし込むっていうのが志なので。それにあてはまるようなことをアウトプットしてトレンドを探しながら、ライフスタイルに落とし込むとか、ブームにならないで終わっちゃったものをミックスしたりしています。

>>>SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(4/4)に続く

※中村貞裕インタビュー

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