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SAPIENS TALK Vol.02 山川 咲(後篇)

 

SAPIENS TALK Vol.02
ゲスト:山川 咲(神山まるごと高専 クリエイティブディレクター)
モデレーター:小柳俊郎(株式会社クロマニヨン 代表取締役/CEO)

SAPIENS TALK vol.02 山川 咲(前編)はこちら

 

◆「神山まるごと高専」設立への道

小柳:そして「SANU」に行ったのち、学校作りに行き着くんですよね。この「神山まるごと高専」立ち上げのオファーを受けた時の心理的な状況ってどうだったんですか?

山川:奄美大島から帰ってきて何もしないと決めていたので、お風呂に入る、ベランダで涼む、またお風呂に入るっていうのをずっと繰り返していました。そしたら旦那に「本当にやることないんだね」って感心されるぐらいの日々を過ごしてたんです。あとは、SANUのオファーを受けていたので、SANUの拠点に行ってみたり。辞めてから「CRAZY」のことを一回たりとも振り返ったことがないぐらいでしたね。
私は娘が生まれて一ヶ月後ぐらいからベビーシッターさんに一日中一緒に見てもらいながら、いろんなところに行って仕事をしていたので。初めて育児だけを行う三ヶ月間を奄美大島で過ごして、そのまま緩やかな生活をしていて。

小柳:そこに学校作りのオファーが突然きたんですね。

山川:ISAK(アイザック)の小林りんさんが寺田さん(神山まるごと高専 理事長、Sansan株式会社 代表取締役社長/CEO)に私を推薦してくださって。会って話を聞くと、すごく面白かったんですよね。いい大学に入るかどうかがモノサシになってしまっているこの世の中で「社会でどう生きていくか」ということを純粋に目指せる高等教育があり、親元も地元も離れる山の中の環境で、テクノロジーとデザインを教えたいという考えの全てがすごくいいなと思ったんです。
でもオファーとしては「理事長をやって欲しい」という内容だったんですよ。学校としてはすごく可能性があるんですけど、私が理事長をやるのがいいのかなとずっと考えていて。

寺田さんは私が引き受けてくれると思っていたらしいんですけど、二ヶ月考えた末に「ごめんなさい、本当に考えたんですけど理事長は出来ません」とお断りの話をしたんです。その時に小林さんにも「ごめんなさい」と電話をしたんですけど、「ごめんって言わなくていいから、本当に良い学校ができるために、思ったことや感じたことがあればちゃんと寺田さんに伝えてあげてほしい」って言ってくださって。
私は申し訳ないモードから一転、「寺田さん、この学校には選択肢が二つしかないです。あなたが理事長をやるか、白紙に戻すか。これ以外は選べないからあなたが理事長をしないといけないと思います」という話をしたんです。

小柳:あのSansanの寺田さんに?

山川:はい。まだ出会って2ヶ月でしたけど(笑)。もちろん周りから100万回ぐらい「(理事長は)あなたが一番良いよ」って、今までも言われてきたと思うんですよ。けど、そんな寺田さんが5分ぐらい黙り込んだんです。ホテルのラウンジで日が暮れかけていて赤く染まる中、5分間二人で黙り続けたあの瞬間は人生の走馬灯に出てくるようなドラマチックな瞬間でしたね。
それから寺田さんは「そうだよね。俺は自分がやらないことを誰かにやってくださいって頼んで、ずるいことをしていたんだね」と。「俺は本当にSansanの事業を本気でやっていて、学校をやるなんて軽々しく言えないと思って、今まではやらないと決めてきたけど、あなたの言う通り二択しかないと思った。これから役員会を通したり色々あるので、ちょっとだけ時間をください」と言って帰っていかれて。私はクロージングされていた側だったんですけど、逆に「時間をください」って言われたので「分かりました」と答えて送り出しました(笑)。その二日後ぐらいに寺田さんが理事長をやる事が正式に決まりましたね。

小柳:すっごいですね、その話!そして、寺田さんはh、覚悟を決められたんですね。

山川:多分私と話した時に覚悟は決まっていたと思います。調整していないのにイエスと言えなかっただけで。そんな寺田さんを見て「この人がやるんだったら私もやろう」って腹を決めていたので一緒にやる事になりました。

小柳:その流れで「神山まるごと高専」のクリエイティブディレクターに就任されたんですね。それにしても寺田さんは散々周りから「理事長はあなたでしょ」と言われてきたのに、最終的に山川さんの一言で決めた理由って何だったんですかね。

山川:そこまで本気で検討してくれている人がいなかったからですかね。私は自分の人生をかけてそこに行くべきか検討して、何回も話をしていたので。あと、本当は寺田さんも薄々は気付いていたと思います。自分が理事長になる事が一番上手くいくんじゃないかと、多分それが見えたんじゃないかなと思いますね。

小柳:そこから一緒に始めて、いろんな企業の方を巻き込んでいかれたんですよね。その企業の皆さんが講師をされるんですよね。

山川:そうです。起業家講師として二人ずつ来てもらい、授業をして、生徒みんなで囲んでご飯を食べて〜という日を毎週設ける予定です。起業家講師の方が50人ぐらいいるので、代わる代わる来てもらう感じですね。

小柳:素敵ですね!この学校、53歳は入学出来ないですか?(笑)。

山川:入学したい大人の方もきっとたくさんいらっしゃいますよね。私も入学したいですもん(笑)。

小柳:「起業してもいい、就職してもいい、進学してもいい」これが社会に直結している部分ですよね。

山川:普通の場合は高専の生徒って大学編入か就職をするんですけど、そこにプラスで「起業」という選択肢があるんだったら専門教育とは言え、一番広い選択肢が得られるんじゃないかなと思って。

小柳:だから高専なんですね。高校じゃなくて、なんで高専なんだろうって思ったんですよ。その高専って、しばらく新設されてこなかったんですよね。

山川:そうなんです。20年ぶりに出来る新しい学校なんですよ。

小柳:ちなみに一つ聞いてもいいですか。パンフレットに「5年間学費を無料にします」ってありますけど…これ、本当に大丈夫ですか?(笑)

山川:寺田さんは理事長の話を受ける時にぼんやりと「自分が理事長をやるんだったら学費を無償にしよう」と決めていたらしいんです。私たちは開校資金として21億円の寄付集めや、20人の教員集め、大量の申請書類を書いたり、今のままじゃ受験生がいないから社会で知られる必要があるという、本当に課題だらけの中でたった3人でスタートしたんですよね。そこから24億円まで集め切った時に寺田さんから「残り10億円で10口=100億円を集めて、その利回りの5%で無償化を実現させよう」という話が出たんです。
でも今の段階でも「何を言ってるの?」「言っていることが分からないんだけど」と企業の大御所の方に言われながら、何の響きもしないアポに寺田さん含めみんなで行って退散したりしながら(笑)。そして今、やっと60億円まで集めたので、1期生は無償化が予測できているんですけど、あと4社必要ですね。

小柳:凄い・・! 億のお金を出してもらうって別次元の話だと思うんですが、どんな話をされているんですか。

山川:この仕事を始めてから「億のお金って動くんだ」と思いましたね。「CRAZY」って400万円、500万円の話しかしてこなかったんですけど、1億円の寄付自体は全然遠い話じゃないというか、ちゃんと中身があれば出してもらえるんだなって感覚はあったんです。でもさすがに10億円という数字に私もきょとんとしてしまって。でも寺田さんに共感して「日本の未来に必要だと思ったから」と受けてくださいます。皆さん自身もやらなきゃと思っているけど自分には出来ない、でも「この男なら実現する」と思うから協力してくださっているんだと思います。

小柳:この学校が開校した事で起こる、最大のインパクトはなんでしょうか。

山川:「日本の未来が変わる」という事は確実に起きてくると思うんですけど、もう少しミクロの部分で言うと自分のことを信じている人間が日本に定期的に増え続けるところから、未知数の未来が作られるんじゃないかなと思いますね。仮に卒業してすぐに起業しなかったとしても、生涯の中で絶対に事業を起こすんじゃないかなと思っているので、その人たちが仲間として社会で繋がっていくと考えています。

小柳:自分を信じることができる道筋をこの学校で作っていくということですよね。それは15歳の時からやるのが一番いいと考えていらっしゃるんですか。

山川:諸説ありますけどね。でも15歳の時から「面白いからやるとこまでやりな」って言って育てたら、光っているものを潰さずに伸ばせる可能性があるなって。

◆ 挑むことが人生における成功

小柳:今回の学校作りのように、これまでとは違う業界の事業をやる中でも共通している感覚ってあるんですか。

山川:答えになっているか分からないんですけど、私がやっていることっていつも、物事に魂を乗せるという感じなんですよね。結婚式、生活、学校が「こうであったらいい、でもそんなの無理だよね」というものに対して「無理じゃない、できる」と信じたいけど信じられない社会があって。私はそこに自分の人生をセットしながら「私はやります」という気持ちでやってきました。

小柳:確かに山川さんは、結婚式でも学校でも「こんなものでしょう」という当たり前の中に違和感を感じた時に飛び込んできたのかなと感じますね。

山川:自分の中に理想ってあるじゃないですか。私は人の人生に関わること、人が死ぬ時に「この人生で良かった」って思う事しかやりたくないんですよ。そういう思いから、自分がやりたい分野で、かつ「こうであった方がいいよね」と感じることに、先んじて自分が魂を乗せているという感覚です。

小柳:そこからいろんな方がその価値観に乗ってくるんですね。

山川:信じたいと言う人は、絶対一定数いるんだって思っているので。多分私の才能って、物事に対して「こういう風になったらいい」っていうシーンや世界が見える事なんですよね。みんなが見ていないものが見えて、それを喋れて、そこをみんなが信じてくれるような確かなものにしていくっていうことなのかなと思いながらいつもやっていますね。

小柳:では最後の質問をしていいですか。山川さんは挑戦の連続だったと思うんですけど、人生における「挑戦」とはなんですか。

山川:「挑戦とは成功である」というのが私の中の定義ですね。失敗するか、成功するかという結果ではなく「自分が挑んだという事自体が人生における成功」というか。結局、失敗しても成功しても人生は続いていく訳で、挑み続けていくという事だけが自分の人生で生き方として選べるものであるし、その生き方をしているのであれば、結果全てダメだったとしても自分の人生が失敗だったとは思わないと思うんですよね。今の時点で私は失敗も成功もしてきているけど「挑戦しているから私の人生は成功」だと思うので。

小柳:何にも挑戦しないのが失敗というか、「何もなかった」というような人生を歩みたくないという事ですね。

山川:絶対に挑戦しろということじゃなくて、挑戦したいと思ったことに挑戦しなかったら、それは私にとっては失敗ですね。

小柳:挑むことがこと自体が成功なんじゃないかという事ですね。今後の活躍も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

山川:ありがとうございました!楽しかった〜!

 

トークを終えて・・・

人を魅了する笑顔・・・という表現があるが、4年ぶりに再開した山川咲さんの笑顔は、その威力に拍車がかかっていた。そして、この話を聞くことができた数日後、文部省は、この「神山まるごと高専」の開校を正式に認めたのだった。これって、もの凄いことが始まる予感がするのは、私だけではないはずだ。

たまに「あの人の人生には、いろいろなことが起こるなぁ」という表現を聞いたりするが、今回、山川咲さんと話して確信したことがある。それは、いろいろなことが起こる人は、いろいろなことが起こる方へと自分で向かって行っている。つまり、それが挑戦するということ。彼女の「自分が挑んだという事自体が、人生の成功」という言葉が、あなたの背中を押していることを感じてもらえたらいいなと思う。

リンク>>>「神山まるごと高専」

 

 

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