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SAPIENS TALK Vol.03 濱田博人(後篇)

SAPIENS TALK Vol.03
ゲスト:濱田 博人 (株式会社マッシュスタイルラボ 専務取締役、株式会社Barbour partners Japan代表取締社長)
モデレーター:小柳俊郎(株式会社クロマニヨン 代表取締役/CEO)

SAPIENS TALK vol.03 濱田 博人(前編)はこちら

大ブレイクの新ブランド「AOURE(アウール)」

 

小柳:ここからは新ブランドの「AOURE(アウール)」について一つずつお聞きしていきたいと思います。
まずネーミングについてですけど、「フクロウ(owl)」からきているんですよね。アパレルブランドの名前の考え方や切り口がよく分からないんですが、これは結構考えられたんですか。

濱田:考え始めたらきりがないですよね。商標登録もされているので、既存である名前はほぼ取れないんですよ。だから必ず造語で、裏の意味を持たせるような感じで作っています。今回はイタリアブランドっぽい雰囲気にしたかったのと、それでいて「イタリアのブランド=男っぽい」というよりは、中性的なイメージにしたくて。

ブランドとして成功するのは「バビブベボ」などの破裂音が入っている名前なんですよね。「バレンシアガ」とか「ヴィトン」とか。それが一昔前のトレンドだったんですけど、最近においては中性的な響きが増えていて。メンズブランドであってもジェンダーレスを意識していて、比較的上品で優しくて、知性に溢れたような名前にしたいと思い、「知性の象徴」である「フクロウ(owl)」を文字って「AOURE(アウール)」と名付けました。

小柳:実は私も最初はこの綴りが読めなかったんですよね。なんて読んだらいいんだろうと思って。

濱田:読みづらいというのも、今の時代は本当はダメなんですよ。もっとシンプルで読みやすいものにしないといけないんですけど、「今までの常識はリセットしていこう」「新時代におけるブランドをつくろう」ということで、そこを半ば無視してネーミングしました。

小柳:そうだったんですね。コンセプトの「Affordable Chic 上質を着こなす日常」についてはいかがですか。「アフォーダブル」は「手の届きやすい」という意味だと思うんですけど、「リーズナブル」と言わずこの言葉を選んだ理由にも思いがあられるのでしょうか。

濱田:例えば「マイケルコース」とか「マークジェイコブス」「ケイトスペード」みたいなラグジュアリーではないけど、その一歩手前の「アフォーダブルラグジュアリー」という言葉が業界内にあって。リーズナブルというよりも、ちょっと高級なイメージがついていて。目指すところは「ラグジュアリー」ではなく、どちらかというと「大人っぽい」ものを作りたい。「大人っぽい=アダルティ」なんですけど、そっちの「大人っぽい」じゃなくて「シックな」とか「上品な」とか「洗練された」というものを作りたいと思って、「シック」を「上品な」と置き換えて「アフォーダブルシック」と言う造語を、コンセプトにしました。「日常的にさらっといいものを着てもらいたい」、他の人からも「多分いいものを着ているよね」と思ってもらいたいんですよね。でも「日常にいいものを着ても疲れない」というところを目指しています。

小柳:これがコンセプトになっている訳ですね。次はキーワードについてですが。「Fair Price(高品質を手の届く価格で)」「 Multi Function(イマの時代に求められる多彩な機能)」「 Feel Luxury(ラグジュアリー性のある素材使いやディティールへのこだわり)」この3つを掲げていらっしゃいますよね。

濱田:これは毎日忘れちゃいけない言葉ですね。社員にもしつこく言っています。

小柳: 「フェアプライス」に関しては皆さん「これぐらいの価格でやらなきゃいけないな」っていう感覚があると思うんですけど、「マルチファンクション」とはどんなことでしょうか。

濱田:着心地だったり、シワにならないといった点ですね。日本人って「ユニクロ」慣れしているんですよ。小さい時から着ているので、洗濯しても耐久性があってシワにならないし、夏は涼しい、そんな服って世界で一番贅沢なんですよ。もっと海外の人たちは服に対してストレスを感じていて。洗濯機に入れたらヨレヨレになったとか、すぐ色が焼けたとかそんなことでクレームを言ってもしょうがないと思っている国の人たちもいっぱいいるんですけど、日本人はそこの感覚が一番研ぎ澄まされていて。気が利いているものをつくりだしたら日本人は世界一じゃないですか。その日本人のレベルに合わせたものづくりをしないといけないんですよね。

小柳:3つのキーワードが揃っている状態を作るように、チームにはいつも言われているんですね。

濱田:どこよりもこれを意識してくれと伝えています。どれが一番大事ということもなくて、3つ全てを大事にしていますね。「AOURE(アウール)」のお店を見に行ってほしいんですが、これをもし感じなかったら、正直ブランドの先はないと思っています。皆さんが「濱田さんはあぁ言ってたけど、全然フェアプライスでもないし、マルチファンクションじゃない。お店も安っぽいよ」となれば絶対に成功しないですね。一過性で終わっちゃいます。たまたま勢いで皆さんが来て買ってくれましたけど続かないですね。

小柳:僕は「AOURE(アウール)いいって言うけど、どこがいいの」って聞かれたら「もう絶妙なんよね」って答えたくなってしまうんですよね。

濱田:僕はサンプル検討する時も絶妙な「さじ加減」を行うんですよね。同じベージュが出てきてみんながいいと言っても「いや、だめだ。50代の大人になったらこのベージュは恥ずかしい」という、結構絶妙なさじ加減ですけど。

小柳:それって数値化できないと思うんですが、濱田さんの頭の中だけにしかないということになるんでしょうか。

濱田:それは会話で埋めていけると思っているんですよね。例えばグリーンってすごく難しい色なんですよ。これをセットアップで着させるって、ものすごく大変なんですけど「このグリーンだったら大人が着れる」という色があって。「上質を着こなす日常」という点で、カラーにもこだわっているんですよね。一つの色でもこれは明るくいこうとか暗くいこうとか、すごく考えています。

小柳:着心地の追求も大事にされているんですよね。

濱田:小柳さんも今「AOURE(アウール)」の服を着てくださっていますが、マイクを持ってジャケットを着ていてもそんなに肩が凝らないと思うんですよね。キメすぎていないし肩の力も入らない。

小柳:はい。肩も凝らないし、さらっと着れます。
こういうキーワード作りというのは、例えば飲食店をつくるとなっても、同じようなやり方をしますか。

濱田:そうですね。絶対に忘れてはいけないキーワードやブランドイメージは難しくしちゃいけない。デイリーな言葉に落とし込まないといけないんですよね。

 

ブランドイメージ具現化のために行ったこと

小柳:そしてこのブランドイメージを具現化するために、戸賀さんと橋本さんをキャスティングされたんですよね。これは濱田さんの中で「この方だな」という思いがあったんでしょうか。

濱田:戸賀さんは「MEN’S CLUB」の元編集長で、今は数々のラグジュアリーブランドをアンバサダーとして紹介していて、いいものを知っている大人なんですよね。知りすぎちゃっているぐらいに。橋本さんは日本人のデザイナーでありながら、機能性を持っているブランドでスポーティーでラグジュアリーみたいなことを体現されてきた方で、非常にスタイルの良い服を提案されているので、たまたま私が旧知の仲だったこともあり、二人とも結構ラグジュアリー派なので「ブランドを作るので一緒にやらない」と声を掛けました。すると「おう、聞かせてよ」と返事があり。ただ、先に「高いブランドはやらないよ。コスパの良いブランドをやる」とは伝えたんです。「戸賀さんや橋本さんの使い方を間違っていると世の中から言われてみたいんだ」と。「濱田さんそれ間違っているでしょう。この二人を使うんだったらラグジュアリーブランドを作った方がいいんじゃない。超金持ち相手にやった方がいいんじゃない」と。でもそうじゃないんですよね。

例えば博多阪急の6階に行っていいブランドがあった、着心地が良くてコスパもいい。でも40〜50代の管理職で「良いものは高い」と思って育った方たちが「この値段で逆にいいのか」「あんまり高くないブランドを着てると部下から思われないか」という不安が過ると思うんですよ。新しいブランドは信頼がないので。でもこの二人が「これでいいんだ」ということを発信してくれれば、安心して買えると思うんですよね。博多阪急のお店の前にも2人の写真が載ったポップを出しているんですが、この二人にお墨付きをもらえるような感じで安心して買ってもらえるんですよ。

小柳:何か新しい時代だなって感じがしましたね。戸賀さんや橋本さんが「これでいいじゃん」と言ってくれている感じがいいんですよね。

濱田:よく僕は食べ物に例えるんですけど、戸賀さんがミシュランの星が付いたお店がおいしいと言っても「高いし、予約取れないし」となる。でも戸賀さんが「ここ、星を取っていないけど、一人1万円でめちゃくちゃ美味しい」と言えば行ってみたくなるじゃないですか。しかもシェフが知らない人じゃなくて実は一流レストランで腕を磨いた○○さん、AOUREで言うと橋本さんが監修していると言うと「これは本物じゃん」となりますよね。そういう服を作りたいんです。

 

小柳:そこからファンをどこにターゲッティングされたかというお話に繋がっていくんですが、「AOURE(アウール)」のターゲットは30代・40代・50代ですよね。僕も衝撃だったのが30代と50代が同じターゲットの中にいる図を見たことがなかった訳ですが。実は「年齢で括る」という感覚があまりなかったのかなぁと思ったんですがいかがでしょうか。

濱田:メンズってパイが本当に小さいので、ある程度幅の広い年齢層に支持されないと事業としては成り立たないんですよね。ただ、軸足をどこに置くかというと、ラグジュアリーブランドにも興味のある50代に納得してもらうことかなと思っていて。
それとちょっと良いものを知り始めた40代のビジネスマンが「ストライクゾーンだ」と言ってくれれば十分なんですよね。そして課長やマネージャー職になったりして「営業に行くにしても20代のビジネスマンとは差別化した服を着たい」「そんなにお金がある訳でもないけどちょっと背伸びをしたい」という30代半ばの世代にも買ってほしいなと。ちょっと商売っ気を持っているんですけど、消費としてはこのターゲッティングは一番おいしいんじゃないかなと思っています。

小柳:確かに40代・50代は使うときはお金を使いますもんね。そしてこのターゲットと連動するようにポジションについてもお聞きしたいんですが。ここだけの話だと思いますけどまあまあリアルじゃないですか。「expensive」と「conservative」の真ん中に「NYのT」さんがあって。

濱田:そうですね。「NYのT」さんも「英国のJ」さんもシンプルに良いものを作っていますし、海外ブランドであり、ライセンスブランドのインターナショナルなテイストで高級感の漂う、それこそここが「アフォーダブルラグジュアリー」なんですよね。まさしく先日オープンした東京大丸店がそんな環境の中にあって。狙い通りの環境に出店させてもらいました。

小柳:確かに思いっきりターゲティングしてやっていますからね。

濱田:ですから、そういった世界的に著名なブランドや国内の老舗ブランドのど真ん中で戦いを挑むという挑戦ですかね。価格で優位に立つというのは当たり前なんですよ。商品で勝たなきゃいけない。並べた時に「いや、全然負けてないぞ」って思わせなきゃいけないんですよね。だからそこはサンプル検討で1番こだわるところでもあって。数々の有名ブランドに挟まれたときに「本当にこれは勝てているかな」というのはすごく気になるし、お店に行っても必ず周辺にある他社の商品との比較を自分でしちゃいます。圧倒的に良いクオリティーで作れているなとは思っていますが。

小柳:そしてロゴについてですが象形文字のような、オーソドックスだけどオシャレな文字ですよね。

濱田:アラビア文字のようなフォントをベースにグラフィックデザイナーに、中性的とかジェンダーレスというコンセプトを伝えると、少しベースラインから細くしたり太くしたり調整をしてくれて。より洗練されたバランスに変えて作ってもらっています。だから結構こだわったフォントになっていますね。

小柳:フォントは大事ですよね。でもすごく合っていると思います。そうして全てのコンセプトが重なった上で「AOURE(アウール)」が出来上がっているわけですね。

濱田:キーワードは表に出すことはあまりないし、消費者に伝えていないんですけどね。「こういうところまで考え抜かれて作っているから、それに負けない商品を作らなきゃだめだよ」というチームに対してのメッセージですね。

小柳:ここが固まっているからそれに沿ったクオリティと製品が出てくるんですよね。

濱田:本当にこれはもう基礎ですね。家を作る上での土台だと思っていて、見えないからといって手を抜いてしまうと、あっという間にもろく崩れてしまうので。

小柳:なんでもそうかもしれないですね。

濱田:レストランだろうが会社だろうが、まず見えないところでも基礎となるところは考え抜いて。でも無理なことをやってもしょうがないので、自分たちのできる範囲で最大限のものを基礎として置いた上で、そこから作り上げていくということが大事だと思っています。

小柳:本当にその通りですね。弊社(クロマニヨン)のブランディングの顧問にお迎えしたいぐらいです。(笑)

濱田:立ち上がるまでの間、当たり前ですけど準備室は私一人だったんですよね。企画書を全て一人で作って。その時にこういう人材が必要だとか、ああいう人材が必要だとか自分の中でイメージしながら面接を繰り返して人を採用して。これを本当に体現できるのかということを、自分で自問自答しながらチーム作りをしました。そして自分の思いを語ってサンプルが上がってきたとき、もちろん100点ではないんですけど「あ、いけるな」と思いましたね。

小柳:スタッフの方が優秀だったんですね。

濱田:面と向かって言わないですけど優秀でしたね。(笑)
かなり1000本ノックを浴びせていますけどね。「ほんとしつこいなこの人」って思っていると思いますよ。会えば必ず同じことを言うから「うるせーよ」って思ってると思うんですよ。でも過去にブレて失敗したことがあるから言っているんですよね。流してしまって「まぁいっか」って言ったものがずるずるといってしまうので。

小柳:そこは心を鬼にして、鋼鉄の決意でやらないといけないんですね。

濱田:やっぱり成功することで、チームのみんながハッピーになりますしね。

小柳:最後に、大きな質問させてください。

「ファッションセンス」ってなんですか?

濱田:ファッションセンス・・そうですね〜。

ありきたりな言葉になりますが、一周回って「生き方」じゃないですかね。例えば、糸島のビーチ沿いで自分のカフェを経営しながら、サーフィンを日常の生活に不可欠なものとして生きている人は、洗い晒しのTシャツとデニムを本当に普通にかっこよく着こなしているでしょう。しかし、都会でシビアなビジネスの世界で勝負しているビジネスマンのスーツの着こなしは、迫力あるものだと思います。わかりやすく言えば、ファッションのセンスがあるかどうかは、その人の生き方が定まっているかどうか。その人が大切にしてる価値観に基づいた生き方や、その人が居心地がいいというライフスタイルがしっかりと確立している方は、自ずとその毎日に合ったファッションになると思うのです。

小柳:なるほどです!!!濱田さん、今日は本当に為になるお話をたくさんありがとうございました!
そして、参加者全員にAOUREのTシャツプレゼントとか、太っ腹すぎます!笑

濱田:いえいえ!ぜひ着ていただければと思います。今日は、ありがとうございました。

 

トークを終えて・・・

濱田さんは、終始、非常にわかりやすく、そして順序だてて丁寧にお話をされる方だった。
群雄割拠にして、スーパーレッドオーシャンなアパレル分野、しかも特徴的なパイが小さい「メンズ・アパレル」分野に、この時代に新ブランドを立ち上げて、開始数ヶ月で結果を出した背景には、これまでの膨大な試行錯誤と「たくさん、失敗しましたた:笑」と言われているように、苦境を恐れない挑戦を継続してきた中で、濱田さんなりに確立された、ブランディングのルールがしっかりあることが感じられました。その濱田さんの中にある様々な成功の法則を、しっかりと「言語化」し、内部や外部に的確に伝え、ぶれることなく一貫性を持って伝え「続ける」こと。これが結果を出す一つの方法だと確信できた90分でした。

濱田さんの「AOURE」は、博多阪急の6階のある。是非、ここまで読んだ皆さんは、足を運んでみてください。

リンク>>>「AOURE」

SAPIENS TALK Vol.03  濱田博人(前篇)

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