SCROLL
-SAPIENS TALK
  • #sapienstalk

SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(4/4)最終回

>>>SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(3/4)に戻る。

◆話題を作るプロデュース術

小柳:これはマーケティングのようでブランディングの話でもあるんですけど、何かをやる時にコンセプトのネーミングやコンテンツ、キャスティングなど、どういうところからやり始めることが多いんですか。

中村:僕らのプロデュースというのはやったことが世の中に知れ渡ったり、話題になったり、メディアに出るというのが得意であり、やりたいことなので。そういったことを求めていない人にはこの話は当てはまらないんですけど、あくまで僕らのやり方だとまずはコンセプトと店名を作ることがスタートですね。僕らはその時のトレンドで「Sign」や「OFFICE」、「THE SHARE」や「THE UPPER」など一言が多いんですけど、ちょっと前までは「Little Darling Coffee Roasters(リトルダーリンコーヒーロースターズ) LDCR」みたいに長くして略したり、飲食だけじゃなくて、ファッションや雑誌などその時のトレンドを意識しながら店名をつけています。店名に関しては自由でいいんですが、どちらかと言うとコンセプトの方が大切だと思うんですよね。僕たちはメディアに出た時に分かりやすいキャッチフレーズを考えています。

小柳:最初からメディアに出た時のイメージを考えていらっしゃるんですね。

中村:例えば「Sign」だったら「待ち合わせ専門カフェ」、「OFFICE」だと「仕事の後の仕事場カフェ」。海外から持ってきた「bills」は「ニューヨーク・タイムズ」に「世界一の朝食」と英語で書いてあったので、それを日本語に変えたりして。15文字ぐらいのキャッチフレーズを付けると、メディアに出た時に店名と一緒に載るので、そのキャッチフレーズがコンセプトになるんですよ。

小柳:「世界一の朝食」は分かりやすくて、メディアにもすごく出ていましたよね。キャッチフレーズがないものは自分たちで作られるんですか。

中村:そうですね。それが上手くはまらない時ってブレちゃっていることが多いので、ハマった時の方が話がトントン進むんですよね。

小柳:それらと連動するものだと思うんですが「コンテンツ」についてだと、「コンテンツを因数分解する」と仰られているのは、どういったことなんでしょうか。

中村:例えばカフェを作る時、もちろん凄いシェフだったら料理だけで戦えるんですけど、僕らはプロデュースでどれだけ話題にするかを目指しているので。コンテンツを因数分解していくと出店場所、インテリアデザイナー、グラフィックデザイナー、スタッフ、制服、BGM、シグニチャーメニュー(看板メニュー)とか色々分かれるんですよ。ブランドによって20個ぐらいしか出ないこともあるんですけど、大体50個ぐらい書き出してその後に例えば出店場所だったら渋谷、インテリアデザイナーだったら●●さん、グラフィックデザイナーだったら●●さん、シグニチャーデザートはパフェ、用途・使い方は女子会、家具だったら北欧のブランド●●とか、具体的にキャスティングをしていきます。それをプレスリリースに書くっていうのが僕らのやり方ですね。

小柳:50個も書き出すんですね。

中村:コンテンツ出しで迷ったら、僕は本屋さんに行きます。雑誌を見ると、例えばカフェ1つにしても「イケメンカフェ特集」とか「スイーツカフェ特集」「渋谷特集」「夜景の見える特集」「海が見える特集」とか取り上げ方がたくさんあって、それがコンテンツになっていくんですよね。でもその後のキャスティングっていうのが一番大切なんですよね。「目利き」となるうちの強みなんですけど、一番難しい点でもあります。僕たちはこのキャスティング力を高めるためにアウトプット力を高めている感じですね。

小柳:メディアもたくさんある東京での戦略としては参考になったんですけど、我々がいる福岡やさっき出てきた上勝町などの地方都市における戦略としてはどんな風に落とし込んでいくのがいいんでしょうか。

中村:昔は「国別」だったんですけど、どちらかと言うと今は「都市別」の時代だと思うんですよね。

小柳:都市別ですか。

中村:「アメリカ」じゃなくてその中でも「ポートランド」や「ロス」に行きたいとか、「スペイン」じゃなくて「サンセバスチャン」に行きたいとか、同じように「日本」だったら「京都」に行きたいとか、「福岡」に行きたいとか。世界的に見ても国じゃなくて「都市」を選ぶ時代になっているのかなって。今はその中でも「あのお店に行きたい」とか「あのホテルに泊まりたい」とか「お店別」や「ホテル別」になっているので、あまり都市も関係なくなっていて。世界から見たら日本の京都・東京・福岡なんてすごく近いんですよ。1時間ちょっとで行けるので、海外の人からするとロス行ってサンフランシスコに行くようなもので。だからメディアでもあまり東京を意識する時代ではなくなっているような気がします。それよりも世界基準で戦えるかどうかっていう部分を気にした方がいいんじゃないかなと。

小柳:メディアにしても、価値にしても地方都市のチャンスですね!「トレンドを作る」という部分でライフスタイルを発信する際に「写真を集めている」と仰っていたんですが、これはどういうやり方なんですか。

中村:僕はアメリカやヨーロッパに素敵なライフスタイルがあると感じていて、実際に現地に行った時も「これカッコイイなあ」って思うことがすごく多いんです。ミーハーの頂点の僕が「かっこいいな」と思うってことは、みんなも結構思うんじゃないかなという仮定があって。海外に行った時はお店巡りをしたりライフスタイルに入り込むようにしているんですけど、例えばルーフトップバーとか「かっこいいなぁ」と思ったシーンの写真を集めています。雑誌とかでもお店というよりこういうシーンの写真をたくさん集めるということをやっているんですよ。そういうシーンが集まる程よりリアルになるので。

小柳:確かにルーフトップバーって今は多いですけど、昔は日本に全然なかったですよね。写真からイメージするって大事なんですね。

中村:一番いいのは「共有のゴールやシーンを体験する」ということなんですよね。僕らは時間とお金があれば連れて行っちゃいます。例えば海外のシーンなんかも実際に体験した方がいいので。

小柳:それが一番分かりやすいですよね。

 

◆目指しているのは「カルチュラル・エンジニアリング・カンパニー」

小柳:中村さんは自らの会社を「カルチュラル・エンジニアリング・カンパニー」にしたいと話されていますけど、これはどういうことなんですか。

中村:これは僕が作った言葉じゃないんです。海外に行った時に「何をやっている人」って説明しないといけなくて。国内では初め「カフェオーナー」と言われていて、プロデュースをやっているうちに雑誌で「空間プロデューサー」と言われるようになったんですけど、何かしっくりこなくて。海外に行った時に僕の仲の良い方から「中村くんはプロデューサーじゃないんだよな。プロデューサーというのは作って終わりで、映画や舞台のイメージがある。中村くんみたいに作ってオペレーションしてライフスタイルシーンを作っていく人は”カルチュラル・エンジニアリング”ってこっちでは言うんだよね」って言われて、それがしっくりきたんです。

小柳:「カルチュラル・エンジニアリング」ですか。

中村:その時に思い出したのが、京都に一昨年できた「ACE HOTEL」の創始者(故アレックス・カルダーウッド)で。日本に「ACE HOTEL」を持ってきたかったので、彼がまだ現役でバリバリやっている時に会いに行ったんですけど、その時にもらった名刺に「CEO」と書いてあったんです。僕は「CEO=Chief Executive Officer」かなと思っていたら「Cultural Engineer Officer」って書いてあって。

小柳:かっこいいですね。

中村:その時は「なんだろう」と思ったんですけど、彼みたいな仕事が「カルチュラル・エンジニアリング」なんだなって結びついたんです。彼が「ACE HOTEL」を作ったことによって街が変わっていったように、例えば1つのカフェや居酒屋、ホテルから始まってどんどん街が変わっていくようなカルチャーを作っていくことを「カルチュラル・エンジニアリング」って言うんだなって。

小柳:そこで結びついたんですね!

中村:「彼らがいなかったら、この街はこんな風にならなかったよね」と言われるような「カルチュラル・エンジニアリング」の人や会社って各都市にいるので、僕はそういう人たちと仲良くしています。「彼らのおかげで街がどんどんできている」っていう存在になりたいし、そういう人たちと切磋琢磨して情報を共有したり、仲良くなりながら街づくりをしていきたいなって。そういった思いで「カルチュラル・エンジニアリング・カンパニー」になろうと志しています。例えば「billsがなかったら朝食を食べるシーンが生まれなかったよね」とか「僕らがやらなかったらこんなにシェアリングオフィスって増えなかったよね」とか。東京や日本のライフスタイルが変わるきっかけの1グループになりたいなって思いがあるんです。

小柳:そう聞くと「エンジニアリング」ってすごくしっくりきますね。福岡の街にもたくさんいらっしゃる気がします。

 

◆大切なのは「面倒くさがらない」こと

小柳:中村さんは本でプロデューサーに必要なのは「縁と運とセンスとスピードだ」と仰ってましたけど、こういったものをちゃんと手繰り寄せたり、自分のものにするために普段心がけていることや、やっておいた方がいいことってありますか。

中村:「縁と運とセンス」は、僕がずっと藤巻さんに言われていたことなんです。「縁」っていうのは色々な出会いがある中で、マメに連絡を取り合ったり、お店が出来たら招待したり報告したりということをやらないと、いい縁にはならないので。「運」というのはチャンスのことで、会社が大きくなると小さい仕事を断ろうとするスタッフが出てきて僕もすごく怒るんですけど、断らないでやっていったら小さい仕事が大きなクライアントになったりするのでチャンスを逃さない、いいビッグチャンスにするっていうことですね。

小柳:どんな仕事も断らずにやっていく、それがビッグチャンスに繋がっていくんですね。

中村:あと「センス」っていうのも、映画、音楽、アート、流行っているお店など、一つでも多くのセンスの良いものを見た人がセンスが良くなるんですよね。「スピード」は僕が思ったことなんですけど、僕みたいなベンチャーな会社は本当にスピードが勝負で。例えば「パンケーキが流行っているな、どうしようかな」と言っているうちにどんどん他が出てきて、やり損ねると2位グループになっちゃうんですよ。なので全てに言えることが「面倒くさがらない」ということですね。

 小柳:なるほど、面倒くさがらずにやるということが大切なんですね。

中村:面倒くさがるとせっかくの縁も普通の出会いで終わっちゃうし、小さな仕事も大きな仕事も面倒くさいなと思った時点でチャンスを失ってしまう。一番は「センス」なんですけど、例えば時間を作れば行けたのに面倒くさがってアート展に行かないと、センスは上がりません。良いものに1つでも触れようと思うから僕は何でも並ぶんですけど、そこで「この店並んでるから辞めようかな」って面倒くさがっちゃうと、良いものに触れられないんですよね。「あの映画観たいな、話題になってるな」って思っても後回しにしちゃったら終わりじゃないですか。とにかく面倒くさがらないっていうことは僕の中のキーワードです。

小柳:中村さんは本当に色んなところに行かれていますもんね。そして「多分忙しいだろうな」と思いながらちょっとしたことを連絡しても、すぐ返事をしてくれて。何でも面倒くさがらずにやるという姿勢はそういった部分にも繋がっているのかなと感じました。

中村:どんどん返さないと溜まっていっちゃうんですよね。毎日たくさんの人に会っているので。

小柳:普段からあまり時間はないと思うんですけど、どうやって折り合いをつけているんですか。

中村:睡眠が減っているぐらいですかね(笑)。でも、結構時間はありますね。僕って生き急いでいる感じに見えるかもしれないんですけど、時間はどんなにやっても余っちゃうんです。あとこれはあまりオススメしないのと僕の性格上出来るだけかもしれないんですけど、人と会う時にダブルブッキングをたくさんしちゃうんですよ。知らない人同士くっつけちゃったりして、みんなまとめて会わせちゃいます。

小柳:「今度東京行くんですけど空いていますか」って聞くと「飲んでますけど合流します?」ってよく言われますもんね(笑)。それがまた縁を生むんでしょうね。今日はたくさんお話しいただき、ありがとうございました!

中村:ありがとうございました!!

 

終わり

>>>SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(3/4)
>>>SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(2/4)
>>>SAPIENS TALK Vol.05 中村貞裕(1/4)

LET'S SHARE

RANKING

INTRODUCTION

ABOUT
SAPIENS

生き抜くための知性を共有するプラットフォーム
SEEMORE
COMMUNITY

MAIL
MAGAZINE

メールマガジン「CLUB SAPIENS」をお届け
SEEMORE