これからの福岡のキーワードは Work Hard, Play More Hard.
コロナ禍に持ち前の柔軟で迅速な対応を実践し対抗。それと同時に「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」という福岡市のハード面の強化を推進してきた福岡市長・高島宗一郎氏に福岡市のこれからについて伺った。
平時の時は見えなかった問題がコロナという有事をきっかけに露呈した
コロナによるパンデミックは、各自治体の首長の実力を露わにした。そんな中、福岡市は全国に先駆けて独自の店舗賃料補助を始めた。ワクチン接種の24時間対応も実施し、9月末には接種率が政令市でナンバーワンとなった。誰もが二の足を踏む中、なぜ福岡市は前例なき一歩を踏み出せたのだろうか。
「多くの人が行政に対して『有事への対応が遅い』と感じたと思います。なぜ対応が遅くなるのか。それは、平時の延長線上で対応しようとしたからです。平時の慣例やルールに縛られて国や自治体のトップによる迅速で思い切った判断が出来ませんでした。福岡市がいち早く手を打つことで、他の自治体にも波及していく状況を作りたかったのです。国会で時間をかけて議論するのではなく、地方が実践して見せ、生まれた事例を全国に広げていくことこそ、日本を最速で変える方法だと私は考えています」。そう話した後、「福岡市だけ先に……と恨み節を言われもしましたが、それでも、他の自治体の動きを加速させることができたことは間違いないと思います」と高島氏は笑った。
2000年の歴史を振り返ると福岡の成長エンジンは「交流」にある
天神ビッグバンの新たなコンセプト「感染症対策シティ」の打ち出しや福岡市東区で進められている「Fukuoka Smart East」など、現在進行形のプロジェクトも多い福岡市。高島氏はその先にどのような未来を見ているのだろう。
「福岡の歴史を紐解くと、金印が送られたとされるおよそ2000年前から、海外の違う言葉の人々が訪れ、今までになかった技術や文化を知り、それを受け入れて日本各地に拡散させた。歴史を俯瞰すると分かりますが、福岡の成長エンジンは『交流』なのです。コロナの影響を受けた今だけを見ると、インバウンドや交流の促進は危険ではないかと言う人もいますが、それは短期的な視点。コロナのような疫病は今までも経験していますし、山笠の起源も疫病退散と言われているように、危機から新たな文化や知恵が生まれた事実もあるのです。そう考えると、このわずか2年の影響で2000年以上続いた福岡という都市の方向性が急に変わるとは思えません。ですから、福岡はこれからも交流によって成長することは間違いないでしょう。
一方で、交流の基礎となるまちづくりの面ではアップデートが必要です。例えば、天神ビッグバンでは、突然のコロナに対して世界に例を見ない『感染症対策シティ』という新しい都市の価値基準となり得るコンセプトを追加しました。さらに、人の心や街を彩る音楽やアートで都市の価値を高めることも必要。つまり長期的な計画だけでなく、『偶然』に適応することや、変わりゆく状況を受け止めて逆境をチャンスに変える『しなやかさ』が重要です」と高島氏。彼のしなやかさが今の福岡に反映されているのだと実感させられる。
都市活力向上の次は Work Hard, Play More Hard.
この10年で、人口増加率、税収上昇率、開業率、地価上昇率などが大都市中トップになり、今では日本で一番元気なまちと言われる福岡市。「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」を目指す高島氏が次に掲げたのは『Work Hard, Play More Hard.』~よく働き、より遊ぶ~というコンセプト。
福岡市の魅力である、都心からすぐの場所にある海や山といった豊かな自然を最大限に活用して、目一杯楽しめるエリアにしようというものだ。そして、このキーワードは高島氏の死生観にもつながる。 「それは『今を全力で生きよう!』ということです。人は、死の瞬間、目を閉じながら、今まで生きてきたことは夢だったと振り返るのだと思っています。どうせ刹那の夢ならば、周りの目を気にして人生を小さくするのはもったいない。仕事にも全力で、遊びにはもっと全力で楽しんでほしいんです。それを実現できる福岡市にすべくこれからもチャレンジしていきます」。
首長として「全力で生きろ!」と鼓舞する高島氏。そんな彼が導く未来の福岡には希望しかない。
最新刊「福岡市長高島宗一郎の日本を最速で変える方法」
写真提供/日経BP
著:高島 宗一郎
価格:1980円(税込)
発行日:2021年5月31日
発行元:日経BP最新刊