自らの意志に向き合い、自らの存在意義を明確にする
この「SAPIENS」創刊号のテーマは「時代を生き抜く」。そのテーマで編集部が、是非お話を聞いてみたいと思った、まさに5人の“サピエンス”たちにインタビューをさせていただいた。世界的アスリート/事業承継者/起業家/著作家/政治家…と、皆さんそれぞれに、活躍する業界も業種も、ましては人間的なタイプもまったく違う。
なので、この大きな時代の転換期に直面して「時代を生き抜く要素は何か?」という共通のテーマで質問を投げかけたとして、何か共通項が見出せるのか?結果、個別各論の話になるのだろうか?という不安と覚悟があった。たとえそうだとしても、全員、今を代表するブランド・パーソンであり、価値ある言葉には間違いない。だからベタな言い方をすれば「出たとこ勝負」でインタビューを行ったのだった。しかし、合計約14,000文字にのぼる5人のインタビューを振り返ってみると、驚くほど共通要素がつまっていた。
その中で、最も印象的な言葉は「芯」という言葉だ。
「迷い、悩んでも、自分の芯に戻ることが重要だと思う(大迫傑氏)」
「外身のアップデートを重ね、普遍の芯をさらに強固にする(村上卓也氏)」
「自分の芯を持っていない人には厳しい時代になった(本田直之氏)」
3人が言われている「芯」。これを自分たちの明確な「意志」や「存在意義」という言葉に言い換えることができるとすれば、牧田恵理氏が語っている「冷静にコロナに向き合えばできることは山ほどある」という言葉や、高島宗一郎市長の「福岡が“交流”によって2,000年以上も都市の価値を創ってきたという流れが、たかだか2年のコロナの影響で変わるわけはないと思っている」という言葉も、同様の意味として理解することができる。自らの「芯」を確立することは、この時代の最重要課題であり、徹底的に自らに向き合わなければ明確な言葉は出てこない。これは企業やチームでいえば、メンバーが腹落ちする、普遍の「経営理念」や「ミッション」を明確にすることだともいえる。
そしてさらに注目すべきは、「生き抜く」というテーマに対して、誰も「いかにして他を蹴落とすか?他に勝つか?」という競争・競合の話をしなかったことだ。一昔前は「生き残り戦略」という名のマーケティングテーマの元、いかに他者を出し抜くか?という方法論がさまざまに語られていた。しかしここに来て、社会の意識はますます本質的な価値を求め、人々は強いオリジナリティに強い「意味」を感じる時代になった。強い意味は、強い「ブランド」を創っていくのだ。