SCROLL
-SAPIENS TALK
  • #sapienstalk
  • #松尾大

SAPIENS TALK Vol.06 松尾 大(3/4)サウナカルチャーの変革

サウナカルチャーの変革

 

小柳:ここからはそういうルーツを持った親方がどうなっていくかを聞いていきたいんですけど、なんでサウナの仕事をするようになったんですか。

松尾:とにかくサウナが好きだったんですよね。いろんな温浴施設に行っていたし、海外に行っても必ずスパ付きのホテルに泊まっていて。当時まだ19歳ぐらいの頃だったと思うんですけど「あそこいいよね。ここもいいよね」と話しながら友達や幼馴染とよくサウナに行っていて。その時に、サウナや温泉にたくさん行くから「そういう仕事が出来たらいいよな」というのは昔から言ってたんです。

小柳:でも、それから別の仕事をされた訳ですよね。

松尾:そうですね。その時はお金の方を追っちゃっていましたけど、やっぱりサウナが好きだったんですよ。

小柳:僕もサウナを薦められましたけど、その時の大ちゃんの薦め方が「翌朝6時半に起きよう」と思わず思ってしまうようなことを言っていたんですよね。「水風呂に入った瞬間、視力が2.8になる」とかね。体験したことないから分からなかったんですけど「入ってみよう」と思いましたね(笑)。

松尾:「音がとんでもなく綺麗に聞こえますよ」とか「味がすごく美味しく感じますよ」とかね(笑)。

小柳:そうそう!めちゃくちゃヤバいやつの勧誘ですよね。そうやって札幌に来られた方をサウナに連れて行っていたのも別に仕事としてやっていた訳ではなかったんですよね。

松尾:遠方から来られた方を案内するのが好きなんですよ。趣味がアテンドみたいな感じで。

僕は飲食店とサウナのアテンドが出来るんですけどそれがすごく好きで、いろんな人をサウナに連れて行っていました。結構なおじさん達を水風呂にどんどん沈めて。沈めていくっていう言い方はおかしいですけど(笑)。

「水風呂に入ったの初めてだな」とか言われながら「こうしたら気持ちいいですよ」と話しながらサウナに入れていくのが好きだったんですよね。

小柳:大体昼食後ってやることがなくなるんですよね。福岡も見るものがなくて、夕食まで自由時間とかになったりしますもんね。

松尾:そうですよね。なんかそれも寂しいので、昼食をとって大体一時半ぐらいからカフェでコーヒー飲んで〜みたいな。で、その後夕食までどうしますかって感じなんですけど、その時間でいろんな人をサウナに入れていたんですね。

小柳:そこからどういうきっかけで「TTNE」を始めたんですか?

松尾:きっかけは「南に有名なサウナーがいる」と小橋賢児に聞いたことから始まって。本や映画にもなったりしたんですけど、僕は賢児と一緒に障害のある人を連れてルート66(アメリカ)を旅したことがあるんです。それが2010年ぐらいですけど、その時に小橋賢児から「一緒に会社をやっている秋山大輔もすごくサウナが好きだよ」と紹介されて。

で、札幌に来た時に彼と会ってたくさん話をしたんですけど「こんなにサウナの話が出来る人初めてだ」って思いましたね。一日2サウナ、3サウナするって当時はあまりなかったんです。でも一緒にご飯を食べに行って「今サウナに入ってきたよ」と大輔から言われても、彼とは自然に「どうせならこのあとまたサウナ行こうぜ」みたいな流れになって。そして「北海道にこういうサウナがあるんだ」って連れて行った先で喋っていたら向かいにいたおじさんから「すみません。もしかしてサウナのプロの方ですか?」って話しかけられたんです。僕らも何のプロなのかよく分からないですけど、「あ、そうです」とか言って(笑)。

小柳:ははは(笑)

松尾:で「私、実はこういう者です」って紹介されたら、その方が当時一つしかなかったサウナ雑誌「Saunner」の編集長だったんですよ。で、3人で「あそこのサウナがいい、ここのサウナがいい」みたいな話になって。

まだその時は海外のカルチャーまで注目されていなかったんですけど、僕は海外のサウナも見ていたので。「カンボジアのサウナやメキシコのテマスカル、パリやスイスのサウナがどうだ〜」とか言っていたら、彼も面白く感じてくれたのか、話が盛り上がったなんてこともありましたね。

そこから一年後ぐらいに小橋賢児から「コペンハーゲンに行くんだけど行かないか」って電話がかかってきて。「なんか面白いものあるの?」って聞いたらそんなに無さそうだったので「それだったら秋山大輔とフィンランド経由でサウナ巡りしてからコペンハーゲンで合流するんだったら行きたいから、誘っといてくれ」って言ったんです。

そしたら「実はそう言うと思ったんだ。秋山大輔も同じこと言っているから、コペンハーゲン集合で2人でフィンランド一緒に行ってきたら」ってなったんです。

小柳:それで二人で初めて旅行したんですか。

松尾:そうです。その頃サウナのことをよく知っているからと依頼をもらって、札幌の「ニコーリフレ」というスパ・サウナ施設のPRで、テントサウナから湖や知床、流氷の中に飛び込む映像の撮影にも携わっていたんですよ。そんなきっかけがあってサウナカルチャーの本場である北欧を旅するようになって。フィンランドには行ったことがなかったので見に行ったんですよね。

小柳:そこから始まったんですね。でも一番最初に作ったのはアパレルだったんですよね?

松尾:そう!アパレルを作ったんですよ。「サーファーにはサーファーのブランドがあって、スケーターにはスケーターのブランドがあるのに、なんでサウナーにはサウナーのブランドがないんだ」とか言って(笑)。

小柳:それは無いですよね(笑)。

松尾:無いでしょ?だって「サウナに行ってる」って自慢してる人もいないですし、「サウナー」というカルチャーもなかったから。北欧やいろんなところを僕は見ているけど、サウナだけおじさんくさい文化として捉えられていたんですよね、今でもちょっとあるんですけど。言うのもちょっと恥ずかしいみたいな。

で多分2016年ぐらいに「サウナー」っていう言葉が出来てアパレルを作ったらという話になったんですけど、「Supreme(シュプリーム)のパロディで作ったら面白いんじゃない?」って。それだったら恥ずかしがらずに着れるし、パクりだけど面白くやればいいんじゃない?って作ったのがきっかけで。最初は俺と大輔で確か6万円ずつ出して確か30枚作ったのかな。最初は自分が着るのと、洒落で作ってみるかってなったのがきっかけなんですよね。

小柳:アパレルを作って、その後どんな事が起こったんですか?

松尾:「Saunnar」ってロゴを作った時に「何ていうブランドにする」って話になって。「ととのえ」で「TTNE」にしようって、ギャグみたいな感じで決めたんですけど。「TTNE」という「サウナーのためのブランドができた」っていうことを11月11日にローンチしたんですよ。「11月11日はととのえの日」っていう記念日を作って。これも記念日協会に申し込んだら15万円ぐらいで作れるから勝手に作っただけなんですけど(笑)。

小柳:そうなんですね!ポッキーの日ですね。

松尾:そうそう。そしたら何が起こったかっていうとアパレルの雑誌から取材が来るようになったんです。雑誌社が僕らのことを取材して「TTNEというサウナーのブランドが11月11日ととのえの日に出来た」と書いてくれて。

サウナのことをやろうとすると当時「じゃらん」さんとか旅行雑誌系とか温浴系のところからスタートさせてグッズ売ろうとするはずなんですよ。だけど僕らは一切そこに手をつけなくて。ファッションとか若者たちが憧れられる層がいるところに種を蒔いていったんですね。ファッション誌がこぞって扱えばおしゃれに見えてくるでしょう?

小柳:けど「本当にこぞって扱うかな」って思ったりしなかったんですか?

松尾:いや、それはすごく思いましたね(笑)。誰がこんなもん扱うんだって。だってSupreme(シュプリーム)のパロディで出れるわけないじゃないですか、普通だったら。

だけど、雑誌社の人間もファッションってどこから生まれるかってめちゃくちゃ面白がっているんですよ。例えば音楽のロックパンクとか、スケートボードやサーフィンとか。そのカルチャーからファッションが生まれてくる過程を見ていて。でも、それが生まれてくるところって結構奇跡で。サーフィンっていうカルチャーが服になっていくってなかなか無いんです。だからこそ作ったのがきっかけなんですよね。

小柳:なるほど。それが「真逆に発想する」と言われているところに繋がってくるんですね。「本流に行き過ぎない」って面白いですね。今キャンプにゴルフ、サウナなど真逆をいってるところがかっこよくなってきていますよね。

松尾:「サウナハット」っていう帽子があるんですけど、当時はあれを被っているだけで笑われちゃっていましたからね。あの帽子を被ってサウナポンチョを着た女の子たちが4人でサウナを楽しんでいる画っていうのが、まずなかったんですよね。だからそういう画作りというか、どういうイメージを付けるかっていうのは、やっぱり映像とか雑誌の写真で出していくっていうのがすごく大事だったなと思いますね。

小柳:真逆の発想をして、本流にいかない。そこからカルチャーが生まれるんですね。もしかしたらゴルフやキャンプにも大ちゃんみたいな人がいて、違うところから変えていったのかもしれないですね。

松尾:そうかもしれないですね!

>>>その1はこちら

>>>その2はこちら

>>>その4へつづく

LET'S SHARE

RANKING

INTRODUCTION

ABOUT
SAPIENS

生き抜くための知性を共有するプラットフォーム
SEEMORE
COMMUNITY

MAIL
MAGAZINE

メールマガジン「CLUB SAPIENS」をお届け
SEEMORE